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東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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汲む

朝からなんども
死んだ人を思い出して
記憶のなかで
話しこんだりしている

おとといの舞台の名残か
本当はそうではなかったのに
母親が空襲で焼け死んだという話を
語り部のごとく演ずるので
母もときどき面白がって
あの世から見物にやってくる

人情家の母は
息子が書いた架空の母の
哀れな最期に同情して
涙をながす

ぼくはバーンアウトした母を
あのように芝居に登場させたが
あれでよかったのかどうか

父は哀れな狂った父となって登場し
妻の焼け死んだ地面に
鶏頭の花を育てて
雨が降るのに
傘をさして如雨露に汲んだ水を
鶏頭の花に注いだりしている

焼け跡とか
焦土になった日本の風景とかが
想像すらできない人びとに
ぼくは
生々しい戦争の悲惨な実態を知らせようと
がらんどうは歌うを書いて
演じ続けてきた

ありありと見えてくるもの
いまはなきはるかな時空なんかではない

衝動に駆られて
姉を抱きしめたあの青年の思いは
永遠に消えていくことはないだろう

怒りも放棄し
愛を伝えるすべも知らない人が
かくなる芝居から
何かを汲み上げることがあるだろうか

だが
すこしニヒルな
アンニュイをたたえた顔をして
ぼくはまた演ずるだろう
ぼくより先に逝った
父母や姉の思いを伝えるために



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