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東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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雪が降る

窓を叩く音
後楽園球場のドームが見える窓に
風に叩きつけられ
くっついて流れ落ちる白いもの

さっきまで夢を見ていた
疲れた足を引きずって
空襲を受けた焼け野原を歩いている僕
一望家屋なく
かつての街に道路だけ残して
赤く焼けた壁土と瓦が
わずかに盛り上がっている焼け野原
拾い集めたトタンを組み立てたバラックで
人が暮らしていた時期があった
頭が支えそうな低いトタン屋根は
釘の穴があいていて
寝転んで見上げれば星のように見える
母は夏布団をかけて伏せっていて
父が母をのぞき込んでいる
どうかしたのと聞こうとして目覚めた

ホテルの窓から
雪が降る
東京の街を見下ろす

降りしきる雪が視野を遮り
夢のような記憶のなかへ誘われる
ぼくは空襲で焼け野原になった
故郷のあの夜のことを思い出していた
迫ってくる火の手を見ながら
さっさと逃げろ
父が大声で僕らに怒鳴り
僕は両親も姉のこともすっかり忘れて
弟と手をつないで必死に走った

七十年の歳月が流れたが
あの日を忘れないために
いまだに一人芝居を演じて
人間がいかに時代に流されていったか
語り続けている

がらんどうは歌う

だれもが通り過ぎるだろう虚と無
あまりにきびしくしかも甘い心のゆらぎ

雪が降る
天から降りる白いものは
ひとを静かに
記憶の塔の
取り戻すことのできない
高みに吸い上げていく

















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| 東光寺山博物誌 | 18:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑















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