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東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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長夜への道

風はいつも逆風だったか
夜明け前に起きだして
エンジンをかける音がする

中央市場の
間口一間ばかり
足の踏み場もない空間に立っていた君

魚の匂うコンクリートは
凍てついてすべりやすく
こわごわ歩むぼくの姿におどろいた彼

なんや見に来たんかこんな時間に
にやっと笑ったが
つぎつぎと紙袋を買いに来る客の応対に追われていた

やがて仕事を変わって
彼が不動産会社に働いていた頃
僕の母親が身罷った

まったく金がなくて彼の家に行った
僕の前の断崖には手を掛ける突起がなかったが
彼はだまって用立ててくれた

長夜という小説を書いて
文学界に転載され
その後転機を計って彼は東京へ出た

長夜という小説は
風葬というぼくが主宰した同人誌に発表したが
彼の長夜を9ポで組んで掲載した

他の作品を8ポで扱ったぼくの編集方針から
仲間割れして気まずいことがあったが
彼は喧嘩別れした同人を頼って上京することになった

僕はそれが許せなかったので
別れに彼が持ってきたジャン・コクトーの絵皿を
もらいたくないと突っ返したりした

横浜に居を構えた彼をその後なんどか訪問した
小火があって転居を余儀なくされ
奥さんはそれが因となって気を病んだ

嗚呼かくなることを書いて
思い出すのは身がよじれるのであるが
晩年の大和での暮らしはいくらか慰みになったろうか

鉄路に果てた彼女
それに悔い苛まれたろう君の余生
手を差し伸べるすべなく

ひとはひとりで歩まねばならぬ
長夜に向かう道は暗いといえども
日は輝き月も明るい

うなだれて晩年を送るのは
罰当たりなのだろう
当たり前の今日のように胸をはって歩むのが僕の役割か

さよならはいうまい
おうと声をかけられて
再会する日もそう遠くないかも知れないから




DSCF2872.jpg
数年前の正月、家内ともども談山神社を参拝した折に、書き初めの会を神社でやっていた。
参加を呼び掛けられ筆をとって三人で遊んだ。

DSCF2860.jpg
東光寺で初護摩のあと、正月を迎えて、、、


悲哀の思い出を癒やしてくれる曲とであったのでリンクしました。
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