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東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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猫の一族

本堂に入り込んだ猫のことを書いたが
扉の隙間を小さくするのは
共生浄土に反するのでは
と疑問を呈する友人がいた

毛だらけの座布団に
猫と交互に正座する気にはなれないので
入れないようにするのは
致し方あるまい

たかが猫と思うなかれ
マニスがやってくるすこし前のことだったが
やはり三寸ほど開けてあった隙間から
本堂に入り込んだ猫の一族があったのだ

早朝の勤行をしようと
本堂に入ると
須弥壇に
作り物の招き猫を並べたみたいに
真っ白の猫が七匹
横一列に並んでぼくを見詰めていた
真ん中が親猫で
両側に三匹づつ並んで
身動きもせずにいた

あっと息を呑んだが
黙って経机の前に座って
塗香を使い
印を結び
勤行の鐘をゴーンと鳴らすと
七匹の猫が一斉に宙に浮いて
四方八方へと飛び去って
なかには扉に飛びつく奴もいたが
狭い隙間から
数秒のうちに姿を消した

その慌てふためきぶりには
笑わずにはいられなかったが
なんだか気の毒なことをした気持ちもして
並んでいた真っ白な猫の一族は
本当にいたんだろうかと
奇妙な夢でも見たような気がした

それから間もなく
真っ黒の子猫を連れてきたひとがいて
山のなかの一人暮らし
猫一匹と暮らせないはずもあるまいと
一緒に暮らし始めた
それがいまは亡きマニス・ノアール
一九九一年の春のできごとだった

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