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東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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ちいさな隙間

本堂の大日如来は
東を向いて結跏趺坐
こどものときにときどきやって遊んだ
忍術使いになってドロンと姿を消すときの
智拳印という印を結んで
荘厳な面持ちで鎮座している

ぼくがマニスと暮らし始めたころ
朝の勤行の時間がくると
マニスは大日如来の結跏趺坐の膝に乗って
ぼくを見下ろしながら理趣経に時折耳を動かしていた

おととい泊まり客があって
朝の勤行に本堂に入ると
いつも敷いてある座布団に
獣の毛がいっぱいくっついていた

本堂の正面の扉を
三寸ほど開けててあるのは
参拝のひとが
覗けば大日如来のお顔が見えるようにだが
時どき出会うあいつが
出入り口にするとは思わなかった
ここで幾日か安眠したにちがいない

痩せこけた虎模様の猫で
不意に遭遇しても
あわてて逃げないで
距離をおいてぼくを観察したりする

昨日は寄ってくるかと呼んでみたが
信ずるに足りないという風に
きびすを返して逃げてった

毛だらけの座布団に
掃除機を持ってきて吸い取ったが
かつてはマニスの大好きな場所だったところには
近寄った気配はない

見下ろしている
ブロンズの少女像を
猫は見上げたかどうか

ぼくが沖縄へ旅をして
帰ってくるまでの数日を
本堂に入って座布団に眠っていた猫がいたことを
ぼくは微苦笑しながら納得した

でもここで
やつに暮らすつもりになられてはかなわない

本堂の扉の隙間を
ネズミなら通れそうなほどに
ぼくはちいさく閉めなおした


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