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東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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黒い花

詩人会議2019年1月号に掲載した詩


 黒い花      
       山内宥厳

僕の胸に棲む
黒い花が萎むとき
夜明けがやってくるのだろう
そんな思いでいままで
世界の推移を眺めて生きてきた
原爆が落とされ
故郷の街が灰燼となって
僕の家族が流浪することになり
井戸もなく
水道もない仮設の家で
池の水で命をつなぎながら過ごした頃
少年の僕の胸に
咲きはじめた黒い花が
いまも僕の胸に咲いている
家族が生きるため
錆びたバケツに
鉄屑を拾い集めて
寄せ屋に売りに行く僕の前に
立ちはだかった警官が
学校はどうした
きみは何歳か
何年に生まれたか
などとしつように誰何されたときにも
黒い花弁は育っていった
僕は小柄な不就学児童だったが
黒い花は
僕を成長させるために
花心から毒を出し
僕の胸に詩の種を発芽させ
黒い花とは何かを知るために
お坊さんに僕を育てた
少年の僕がいたあの時代の空気が今また濃厚になって
僕の胸の黒い花はいまも風に揺られている
暗い過去は足音もなく
またすり寄って来る

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