東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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鏡と頭

ほんものの
自分の顔は
だれも見ることが出来ない

マックのパソコンでは
photo boothというソフトで
自分の顔と向かいあうことが出来る
立ち上げると
これが己かと思う顔が
僕を見つめている

自己嫌悪にかかりたければ鏡を見よ
などとニーチェは言ったりしなかったが
己の顔に見惚れるような
ナルキッソスでも無い限り
鏡は冷酷にありのままの自分を
見せてくれる

ジキルとハイドではないが
人間には
頭のなかにいる自分と
生身の自分とのふたつが
矛盾無く生きていて
頭のなかの
作り上げた仮想の自分が
ずれも自覚しないまま
毎日を
疑念も抱かず
生きて
動いて
いるのかも知れない

部屋に飼っている
小鉢のなかの
メダカに
視線を走らせたりしながら
MacAirで
さきほどちらっと見た自分の
自分ならぬ顔を思いだし
こんなことを書いている

痛む足の指先
冷える手足
昨夜剃ったのに
もう伸びてきた無精ひげ
ああいやだ
などと独りごちながら
夕方がくるのを
見上げている

すこし散歩にでかけよう
この気に食わぬ顔のままで
文庫本の背表紙でも眺めて
気分を変えてきましょう


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