東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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ゆりのき

九月になった
まだ汗ばんでくる真夏日の朝
ゆりのきの樹影と
蔦に覆われた
楽健寺に
二人の訪問客が現れ
この長屋は
お宅一軒だけになり
老朽化して来ましたので
危険でもありますから
長年お住みいただきましたが
取り壊すので
年内いっぱいで
立ち退きをしていただきたく
お願いに上がりました
と随分前に
一度だけ会ったことのある家主がやってきた
家が老朽化するように
家主もすっかり
初老の白髪のひとになっていて
好々爺という雰囲気

春先に隣家が転居して
六軒長屋に
我が家だけが残り
家内ひとり
鼠の出没に悩まされたりしながら
暮らしていた

立ち退きとは
衝撃ではあったが
分かりましたと諾った

その夜
さっそく検索して
近隣の家探しを始めた
メールを送った不動産屋から
翌朝さっそく電話があって
物件を見に行った

三件目の家が
地の利もよく
家内も気に入ったというので
即決した

住み慣れた楽健寺は
借家の寺だが
半世紀近く
車庫の前もすっかり花壇にして
枇杷の木もたわわに実をつけていたが
去年から枯れてきて
三十数年前に
苗木を植えたゆりのきが
大きく育って大屋根を超えている

なにかがおわり
なにかがまたはじまる


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