東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

2016年04月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年06月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

伝説 (ソネット)

信仰にも哲学にも疲れ果てた旅人が巡るのは
思索のなかに輪廻するこの世とあの世
深く果てなき闇の迷路を
辿ってきた今日までの己が足跡か

人が冀う幸福は何処かにあったか
父の手母の手祖父の手祖母の手
そのまた親たちの手が掴んだ幸福は
路傍の石ころのごとく誰も顧みない

たった一度っきりの
与えられた巡礼のいのちの今日
他者を見る疲れたその目に光るもの

どこかで選択が間違っていたのだろう
真に生きるべき時代の時空を超えて
この星にいま生きる無力な旅人の一人であることは

IMG_1437.jpg

スポンサーサイト

| | 19:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

きらら (ソネット)

きららという言葉がある
メダカの卵もきららたるものだが
ぼくが覚えたきららの実態は
下着の縫い目に産み付けられた虱の卵だ

きららという名の米があった
敗戦後の混迷期に
虱の卵をきららと呼んでいたぼくは
なんだか納得し難かった

ガラスの器の底に
一塊のきららが沈んでいて
子細に観察する

メダカの卵のきららから孵化したのは
全長2ミリ胴体は0.3ミリほどか
透明なガラスの底にへばりついて蠢いている


rice.jpg

| 東光寺山博物誌 | 15:16 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

鶏鳴 (ソネット)

乳房のある鶏が
午後の陽差しを受けて
書棚に光ってる
ものうい五月

焼きしめた
テラコッタの鶏
大阪万博の頃に
僕が手びねりした

歩いて転んで
叫んで
泣いて

八十路になって
来し方を通覧していると
底のほうから鶏鳴が聞こえる


IMG_5068.jpg

| | 10:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

燃える国

きょう巨大な日没を見た
二上山のはざまに
ゆっくりと下がっていく入り日
軽四輪のフロントグラスの
真っ正面に
太陽が矢をつがえ
西に向かって走る僕の目を狙って
飛んでくる
光の矢束
僕は
太陽を真正面から見詰めるのは
得意技だ
睨み返した日輪は
光輪をゆっくりと右に回している
二上山のトンネルに近づくと
日輪は姿を没した
二車線の南阪奈トンネルに入る
連休なので
普段よりは車が多い
マニュアル車の軽四だが
僕の運動神経に敏感にレスポンスして
エンジンも軽快だ
日本最古の
竹ノ内街道を潜って抜ける
トンネルを抜ける直前
半円形の出口が
思わず息を詰める深さで
朱に彩られていた
トンネルを抜けると
真正面に大日輪が
阿字観の極まった如来のごとく
羽曳野丘陵に浮かんでいる
太陽は
凝視する僕の目に
光柔らかく
微笑しながら
空間をいびつに揺らし
沈んでいった



二上山の夕陽をyoutubeからお借りしました。


| 東光寺山博物誌 | 21:43 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |