東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

2014年06月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年08月

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汲む

朝からなんども
死んだ人を思い出して
記憶のなかで
話しこんだりしている

おとといの舞台の名残か
本当はそうではなかったのに
母親が空襲で焼け死んだという話を
語り部のごとく演ずるので
母もときどき面白がって
あの世から見物にやってくる

人情家の母は
息子が書いた架空の母の
哀れな最期に同情して
涙をながす

ぼくはバーンアウトした母を
あのように芝居に登場させたが
あれでよかったのかどうか

父は哀れな狂った父となって登場し
妻の焼け死んだ地面に
鶏頭の花を育てて
雨が降るのに
傘をさして如雨露に汲んだ水を
鶏頭の花に注いだりしている

焼け跡とか
焦土になった日本の風景とかが
想像すらできない人びとに
ぼくは
生々しい戦争の悲惨な実態を知らせようと
がらんどうは歌うを書いて
演じ続けてきた

ありありと見えてくるもの
いまはなきはるかな時空なんかではない

衝動に駆られて
姉を抱きしめたあの青年の思いは
永遠に消えていくことはないだろう

怒りも放棄し
愛を伝えるすべも知らない人が
かくなる芝居から
何かを汲み上げることがあるだろうか

だが
すこしニヒルな
アンニュイをたたえた顔をして
ぼくはまた演ずるだろう
ぼくより先に逝った
父母や姉の思いを伝えるために



IMG_2200.jpg










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揺蕩う

夜っぴて吹きすさぶ風が
闇を一層深くし
庫裡の屋根に
木霊が降りてくる

小学校に入る前から
祖母ヨウのところに泊まりに行ったが
裏庭の竹藪のさざめきが
悪霊を運んでくるしるしに思われて
おびえがぼくを縮こまらせ
祖母にしがみついて寝た

祖母はたぶん六十代の半ばか
両太腿で
冷え切った僕の足を温めながら
夜風におびえる魂を癒やしてくれる

祖母の家の便所は
竹藪が傍まで迫って
雨戸のない廊下へ出ると
暗闇で揺れる竹藪は
長い濡れた髪を垂らした女のように
僕を脅かすのだ
なんどか小便に起きたが
祖母は一緒に起きて見守ってくれていた

このところ頻尿だったりして
眠りが浅く
じきに便所にいる夢を見る
さまざまな場所の便所が現れ
祖母の家の便所にも
竹藪に迎えられながら
夢のなかではなんども訪れる

夢のなかの便所では
決して果たすことはできず
床が傾斜していて立っていられなかったり
カーテンに仕切られていて
めくってもめくっても
まだカーテンに隠されていたりする

昨夜の夢のトイレは
六畳ほどの座敷の壁際にある便座式で
僕はそこに座っているが
便座の下に穴はなく
ベンチに便座がおいてある風なのだ

腰掛けている便座の足元に
白い布団が敷かれていて
頭を向こうに誰かが寝ている
それが父親だと僕には分かっていて
どうして父がここにいるのか
何故父の足元へ腰かけて
僕は小便などしようとしているのだろう

夢のなかで便所探しをする
揺蕩うわが老年期
哀れな老人が僕なのか
目覚めて便所へ行きながら
僕はいまも夢のなかでは子供のままなのか
などと自問する

夢から解放され
庭に出て登る朝日に手を合わす
見上げる杜は
木の葉の大きなドームになっていて
そこに立って心を澄ますと
くろがしの木霊が息吹きをかけてよこす

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| | 20:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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