東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

2013年12月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年02月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

存在と時間

黒猫の歩みのように
闇が
霧が張ったように
本堂に立ちこめはじめると
花を持った少女が
仄明かりに
浮かび上がり
時間を止めてぼくを見下す

今春
また誕生日がやってきて
思いがけない場所で
ケーキを出してくれたひとがいて
ローソクの灯りを吹き消したりしたが
秒針のセコンドのリズムに乗って
ぼくは現在を生き
自覚しない変化の乗り物で
どこかへ運ばれている

時間はいつも
謎の女の微笑のように
ぼくを悩ませてくれるのだが
まいにち生きて
なんじゅうねんも
きのうの続きを生きているだけのぼくに
赤い花をもった少女は
問いかける
あなたは何者か
どこから来て
どこへ行くのかと
だれも解き明かしたことのない
存在の不可思議を
ぼくに問いかけるのだ

きれいはきたな
きたなはきれい
だれもがふたつの影をもち
あらゆるものは坩堝のごとき
この世に存在する

少女が
両の手に捧げ持つ花は
やがてしおれ
闇に落ち
地下に消える

1970年
ぼくの誕生日に
西宮の彫刻家
渡辺宏のアトリエにいて
十人ほどで
氏の快気祝いをしていた

不意にお経が聞きたくなったぼくは
同席していた僧侶に
無理を言って声明を聴かせてもらった

その刻限に
30歳の義弟が
三人の幼子を残して
交通事故で死亡していた

渡辺宏さんの個展に
制作された作品を
黒猫がらみのお世話をした謝礼にともらったが
素材の樹脂が発する臭いが強く
身近に置けなかったので
二十年以上も
本堂の庇の下に
落ち葉に埋もれながら
寝かせてあった

一昨年
夢に少女が現れたので
ぼくは下ろして少女にまみえ
まだ樹脂臭が抜けないので
ブロンズに置き換えて
本堂の柱に安置することとした

彫刻の師であるだけなく
時間も気分も共有した
懐かしい思い出を花に託して
切り取った曼珠沙華を
少女の両手にもたせる
 
なぜここにあるのか
意志をもった
時を共有する一個の存在として
ぼくが向き合うとき
時は
漣のようにゆれながら
闇をつつみこむ




th_P1030224.jpg
ひとり芝居「がらんどうは歌う」公演の本堂


P1030222.jpg
花を持った少女が 仄明かりに 浮かび上がり 時間を止めてぼくを見下す

スポンサーサイト

| 未分類 | 09:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

長夜への道

風はいつも逆風だったか
夜明け前に起きだして
エンジンをかける音がする

中央市場の
間口一間ばかり
足の踏み場もない空間に立っていた君

魚の匂うコンクリートは
凍てついてすべりやすく
こわごわ歩むぼくの姿におどろいた彼

なんや見に来たんかこんな時間に
にやっと笑ったが
つぎつぎと紙袋を買いに来る客の応対に追われていた

やがて仕事を変わって
彼が不動産会社に働いていた頃
僕の母親が身罷った

まったく金がなくて彼の家に行った
僕の前の断崖には手を掛ける突起がなかったが
彼はだまって用立ててくれた

長夜という小説を書いて
文学界に転載され
その後転機を計って彼は東京へ出た

長夜という小説は
風葬というぼくが主宰した同人誌に発表したが
彼の長夜を9ポで組んで掲載した

他の作品を8ポで扱ったぼくの編集方針から
仲間割れして気まずいことがあったが
彼は喧嘩別れした同人を頼って上京することになった

僕はそれが許せなかったので
別れに彼が持ってきたジャン・コクトーの絵皿を
もらいたくないと突っ返したりした

横浜に居を構えた彼をその後なんどか訪問した
小火があって転居を余儀なくされ
奥さんはそれが因となって気を病んだ

嗚呼かくなることを書いて
思い出すのは身がよじれるのであるが
晩年の大和での暮らしはいくらか慰みになったろうか

鉄路に果てた彼女
それに悔い苛まれたろう君の余生
手を差し伸べるすべなく

ひとはひとりで歩まねばならぬ
長夜に向かう道は暗いといえども
日は輝き月も明るい

うなだれて晩年を送るのは
罰当たりなのだろう
当たり前の今日のように胸をはって歩むのが僕の役割か

さよならはいうまい
おうと声をかけられて
再会する日もそう遠くないかも知れないから




DSCF2872.jpg
数年前の正月、家内ともども談山神社を参拝した折に、書き初めの会を神社でやっていた。
参加を呼び掛けられ筆をとって三人で遊んだ。

DSCF2860.jpg
東光寺で初護摩のあと、正月を迎えて、、、


悲哀の思い出を癒やしてくれる曲とであったのでリンクしました。

| | 11:55 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |