東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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菩提樹

台風30号が
レイテ島に吹き荒れて
一万人を超える人々が高波に呑み込まれ
夕刊には
瓦礫を後ろに
コップを片手に
渇きを癒やすいっぱいの水を待っている
頭からコートをかぶった少年が
写っている

レイテ島は
大岡昇平のレイテ戦記を読んだほか
知るところはなかったが
戦跡の気配もない南の島に
営々と積み重ねてきた
人々の暮らしが
台風一過で失われた

ぼくは幸運にも
空爆の下を駆け抜けてきて生き続け
恐るべき天変地異にも遭遇せず
他界のこととして
ニュースを眺めて生きてきた

世界のだれもが
食いはぐれのないように
そんな世界を
どれだけ多くの良識が望んだことだろうか

時代は冷酷に時を刻み
毎日のように
世界の悲惨が届けられる

こうして明日がまたあるように
いまを生きているのは
とんでもない間違いではないだろうか

ひとはどうあるべきか
などという真剣な問いを
いつの間にかどこかへ置いてきて
がらんどうは歌うなどという芝居を演じたりしながら
私は平穏ないまを生きているのではないか
これでいいのか

そんなことを考えながら
冷えはじめたので
霜にやられないようにと
庭の菩提樹の二鉢を
本堂前の庇の下に移す
今年は菩提樹にたっぷりの水をやったので
挿し木を試みた菩提樹も
ぐいぐいと成長して
鉢から長い毛根がはみ出していた



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