東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

2012年11月 | ARCHIVE-SELECT | 2013年01月

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ハモニカ

  ハモニカ

クヌギや木楢が
昨夜の風でほぼ裸木になって
東光寺山から
耳成山と二上山が見えるようになった
 
冬はいつも僕を感傷的な気分にさせる
はじめて自分で買ったハモニカを
ポケットに入れて
ごつごつしたオーバーコートのポケットから
淀川の堤防に座って取り出したのは
十八歳の真冬の夜のことだった

旧陸軍の兵隊の着ていたという
カーキー色のオーバーコートを呉れたひとがいて
黒い色に自分で染めて着て歩いた

ぼくは罪と罰を読んだりしながら
ラスコリーニコフになったような気持ちで
寒風に吹かれると身震いしたが
なにごとかに決意を固めた男のように
そのコートを着て
風の冬を歩くのが好きだった
ハモニカをポケットにしのばせて

小学校五年のときに
ハモニカを今度会ったら買ってあげる
という堅い約束をしてくれたひとが
ある日やってきたので
ぼくはその約束を守ってくれるだろうと
見送りがてら駅まで一緒に歩いたので
あのハモニカを
とひとこといったら
いかにも気に触ったみたいに
どこに売ってるんだ!と
内ポケットに手を差し入れて
怒気を含んだ声でいった

その男は姉をぼくから攫っていったが
ぼくはそれっきりその男を意識から遠ざけ
いつか自分で買うんだと思い
やっと十八になってハモニカを買ったのだった

黒いぼくの鞄には
いつでもハモニカが入っていて
ハモニカを手にすると
あのときの男の怒気が思いだされる

なぜぼくはそれを忘れられないのか
そんなことを思いながら
即興で
もの悲しい曲を吹く

Blues Harp



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