東光寺の日々

東光寺の暮らしのなかから創作される、詩歌や散文。

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初冬

  初 冬
 
夕陽が二上山に姿を隠そうとして
クヌギの林が朱に染まる頃
マニスと裏山を散策するのが楽しみだった

行こう と声をかけると
マニスはさっと裏への山道を駆け上がり
曲がり角で立ち止まって
ぼくが来るのを確認すると
雑木林に走りこんで
クヌギに爪をたてて一気に木登りをやってみせ
数メートル頭上から
ぼくを得意げに見下ろしている

沈む前の夕陽のあかねが
マニスの真っ黒の毛にきらきら映えて光ってる
このようなマニスの敏捷さは
何年続いたのか

いつからか夕陽のころの散歩もしなくなり
パソコン部屋で仕事をしていると
マニスは横の窓の敷居に飛び上がって
外を眺めている
猫はじっと外界の空気を眺めて飽きることがない
そんなことが何年も続いて

ある日
マニスが敷居に飛び上がって前足の爪をたてたが
跳躍が足りなくて
畳にどさりと落下した
なんたる不覚と思ったかどうか
マニスは僕の膝に場所を変えてとびあがり
黙り込んだ

そうか そうか
とぼくは思い
なにかを失いつつあった
マニスの黒い毛をなでてやった

本堂に設置した
ブロンズの阿修羅像には
マニスとかかわる
ながいヒストリーがあって
そんなことを思いだしながら
わが人生のいろんな出会いを噛みしめている

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| 東光寺山博物誌 | 19:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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